MIJ-01 Manual

4.Analog Setting センサーの接続と設定

4-1.センサーは大きく分けて電源を要求するもの、しないもの、アナログ出力(電圧出力)、風速計などの無接点AC、雨量計などの接点パルス、シリアル出力などが存在し、 更に、電源を入れてX秒待ってから出力をログするシーケンス(プレヒート)を考えなくてはならないものまで存在します。代表的なセンサーについて解説していきます。

4-2.アナログ出力、電源不要なセンサー 熱電対、サーモパイルを使った日射計、フォトダイオードを使った光センサーなどアンプを使わない代わりに出力が小さなセンサーが挙げられます。このタイプのセンサーは 最大出力が数μV〜10mV程度しか出ないので、耐ノイズ性が高いディファレンシャル接続(以後DIFF)を推奨します。図2-1.に示すようにロガー本体端子台の近くにDIFF、H 、L、という印字がありますので、ここに接続します。Hはセンサー出力の高い方、つまり+側を接続、Lはセンサー出力の低い方、つまり-側を接続します。接続は図2-1のよ うにマイナスドライバー(慣れると指や爪でも)などを使って端子台のボタンを下方向に押しっぱなしにするとケーブルエンドを差し込めます。ケーブルを奥まで差し込みつ つ、押すのを止めるとバネの力で常時ケーブルを挟み続ける構造です。抜くときは逆の手順。ケーブルの被覆は7〜10mm程度を剥くのが良い塩梅です。一般的には、はんだメ ッキをして頂く方が腐蝕の予防やケーブルがバラけ、粉砕してしまうのを防ぐ効果があるのでお奨めです。ただし、熱電対の場合はハンダの層が熱起電力の再現性を邪魔する のと、単線ですからハンダメッキの意味が無いので、そのまま接続しましょう。0.2mm以下の細い熱電対の場合は、端子台の結合が弱くなることがあります。二つに折り、ね じると太くなり良い塩梅です。ELOGの設定は図のように15mVレンジを選択します。例外的にT型熱電対、K型熱電対を使う場合はSensor TypeでThermocp TやThermocp K を選定するだけで構いません。Sensor Nameは好きな単語を入力してください。ただし16文字の制約があります。

4-3.アナログ出力、電源を要求するセンサー 土壌水分センサー、温湿度センサー、一部のアンプ搭載のサーモパイル型、フォトダイオード型の光センサーなど、センサーに内蔵する電子回路を駆動して初めて出力が出て くるタイプのセンサー類は、プレヒートと呼ばれるシーケンスで動作します。通常は配線が4本出ています。図Aに示したプレヒート端子がセンサーへ電源供給を行う端子で、 1〜8までの刻印があり、それぞれの番号がDIFFの番号に対応しています。例えばPRH1はDIFF1とセットで使用します。配線は以下のように行います。ELOGの設定はセンサ ーに適したInput range, Preheat Voltage, Preheat Timeを選択します。特にPreheat Voltageはセンサーの仕様に慎重に合わせてください。高すぎる電圧はセンサーを破損す ることがあります。

このような電源を要求するセンサーの多くは出力がアンプにより増幅されている特徴があります。通常は数百〜数Vの範囲です。その為DIFFでなくてもシングルエンド(以後 SE)で十分な精度で在ることが多いです。ただし、ケーブルの長さが20mを越えるときなどは環境ノイズが増えるので、DIFF接続の方が良いでしょう。SEを使うメリットは入 力チャンネルを多く確保できることです。例えばMIJ01本体だけでSE16chを使うことが出来ます。SEとプレヒートを併用する場合の注意点は、PRH端子は8組の制約があるた め、例えばSE1&2に接続したセンサーでPRH1を共用する接続になります。その理由で、SE1&2には同じセンサーを接続するのが良いでしょう。また最初からSE仕様のセンサ ーでは、信号+、電源+、信号グランドと電源グランドが共用になっており、計3本の電線で構成されています。この場合の配線は以下のように行います。共用する端子台には 2本の線を接続することになりますが、接触不良を防ぐためには外部で2本を束ねてハンダ付けするか、別途端子台で接続した上で、ロガーに配線するなどの工夫をしてくださ い。Measure MethodプルダウンからSEを選定すると、DIFF1だった1行がSE1とSE2に2行に分割されます。DIFF1つがSE2つに分割されたわけです。この配線時のPreheat TimeはSE1の行で設定した0.1秒の間PRH1端子に出力され、SE1とSE2のセンサー両方に2.5Vが0.1秒印加されることになります。引き続きSE2の行で設定した0.1秒の間、同様 にPRH1に印加されます。実際には2.5VがPRH1に連続して0.1+0.1=0.2秒印加される動作になります。この動作を理由にSE1とSE2に接続された2つのセンサーに対して、別々 の電圧を設定することが出来ません。繰り返しになりますがSE1とSE2には同じセンサーを接続すべきです。

上記で示した外部配線が面倒なときには、SE設定した上でSE1はActive、SE2はActiveのチェックマークを外すことで、奇数SEのみを使用する方法もあります。この場合は全 部SEに設定してもロガー本体のみであれば8chしか使えないことになります。例えばプレヒートが2.5V、プレヒート時間が0.1秒、出力レンジが0〜1VのセンサーをSEで1本接 続する場合のELOGの設定例は以下のようになり、SE1の横のSE2のアナログ入力を使用せず、PRH1をSE1で独占する接続方法です。マルチプレクサ(MUX32/64)の増設など で、チャンネル数が贅沢に使える場合などにはこういう使い方もあります。


補足1:上記までの説明でDIFF1HとSE1、DIFF1LとSE2は同じ端子だと気が付くと思いますが、その通りです。DIFFの意味は電源のGと絶縁されている配線で、HとL 間の電圧の差分のみを検出する事でHとL双方に同様に生じたノイズの影響を相殺する計測方法です。SEではPRH1GとSE1間の電圧を検出しますから、相対的にノイズ に弱い配線です。しかしノイズは絶対値で評価されるので、出力の大きなセンサーであればノイズの影響が相対的に少ないと言えます。目安としてスパンが数百mV以 上のセンサーの場合はSEで使えると判断してください。言い換えると、最初から3本の電線しか装備されていないセンサーはSE接続しかできず(DIFFで計測する意味が ない)、4本の電線が装備されているセンサーではDIFFでもSEでも配線でき、自由度が増すと解釈できます。一部特殊なDIFF仕様のセンサーの場合はSEで使えないこと もあります。それを嫌がるアンプが入っている場合です。センサーのマニュアルを参照してください。

補足2:Preheat Timeについて、センサーのマニュアルに明記されていない場合があります。設定とRead Nowを繰り返して、センサーの出力が十分になる時間を探し てください。正常な動作ができる範囲でなるべく短い時間を探すのが好ましく、限られた電源の消費を抑えるメリットを得られます。

4-4.白金測温抵抗体の測定 抵抗値の変化を出力としているセンサーが存在します。サーミスタ温度計、白金温度計、一部の水ポテンシャルセンサー、デンドロメーターなどです。ここでは代表的 な白金測温抵抗体Pt100の接続を説明します。ELOGでSEを選定するとSensorTypeのプルダウンメニューにてPt100を指定できます。この時点でPt100用の電圧レンジ とプレヒート電圧が自動で設定されます。この時の配線は図の通りです。外部にシャント抵抗10Kを使います。動作はプレヒート電圧を使って、シャント抵抗で分圧さ れ、Pt100側を電圧値として読み、ELOGの表示や記録は温度(℃)の単位で行われます。シャント抵抗は温度係数がなるべく良い物を選定してください。例として PTF5610K000AZEBなんかは値段と性能のバランスの観点でお奨めです。



4-5.サーミスタの測定 EMJが英国Delta-T社の代理店を長らく努めている関係から、Delta-T社の土壌水分センサーに内蔵しているサーミスタを使った地温の測定については特別なサポート を本ロガーでも実施しています。ELOGでSEを選定するとSensorTypeのプルダウンメニューにてDelta Thermistorを指定できます。この時点でDelta-T社のサーミスタ の電圧レンジとプレヒート電圧が自動で設定されます。この時の配線は図の通りです。外部にシャント抵抗10Kを使います。動作はプレヒート電圧を使って、シャント 抵抗で分圧され、サーミスタの値を電圧値として読み、ELOGの表示や記録は温度(℃)の単位で行われるようにあらかじめ演算式を内蔵しています。シャント抵抗はPt の時と同じ選定方法です。



4-6.一般的な抵抗値の測定 抵抗値を計測して、その値を物理量に換算する一般的な方法を記載します。上記同様の配線方法で電圧値として抵抗値を計測し換算するという方法です。シャント抵抗 をRr、かかる電圧がVr、測定対象をRs、かかる電圧がVs、設定したプレヒート電圧をVpとすれば

Rs/Rr=Vs/Vr Rs=Vs/Vr*Rr=Vs/(Vp-Vs)*Rr

Vsは実際にSE1で計測している電圧、Vpはプレヒート電圧なので既知、Rrも既知となり、Rsの演算が可能になります。 具体例として風速計の風向がポテンショメータの場合で0-360°が0-10KΩという仕様の場合を計算します。プレヒートを5V、シャント抵抗を10KΩにしたとき、式か らRs=Vs/(5-Vs)*10000、ここまでRsは演算できますね。後述するData File Calculation Settingを使って抵抗値を演算結果として求める場合はX001/1000/(5X001/1000)*10000のように入力します。(X001は変数の指定。/1000はmVからVに換算しています)

次に風向WD°を求めると、WD=360/10000*Rs =360/10000*Vs/(5-Vs)*10000
SE1で得られた電圧が1500mVとすれば、WD=360/10000*1.5/(5-1.5)*10000 =154.28° が風向になります。上記同様に物理量への変換を使う場合は、360/10000*X001/1000/(5-X001/1000)*10000 を入力すれば角度として記録させることが可能になります。


4-7.風速計などの無接点AC ACパルスとか呼ばれることもありますが、実際はパルスとは言えず、ACサイン波が出力されています。ロガーはその判定に電圧0Vをクロスしたときに1カウントとみなし ますからゼロクロスと呼びます。ZC(ゼロクロス)ポートは2ch装備されており、2台のパルス出力型風速計を接続できます。最大1KHzまでのカウントが可能です。風速計の 仕様によってはFV変換(ACサイン波から電圧に変換)されて電圧で出力するタイプもありますから、その場合はここでの説明に該当せず、電圧入力とプレヒートで対応しま す。この項では一般的な交流出力の風速計を対象とした説明です。配線は以下の通りです。

風速計1の信号線の1本            ZC1
風速計1の信号線の別の1本    DG
風速計2の信号線の1本            ZC2
風速計2の信号線の別の1本    DG

DGはデジタルグランドを意味し、本ロガーでは接点パルスのDGと共用です。周波数と風速の関係は風速計の仕様によります。例えばm/s=0.0980×Hzとかの換算係数が風 速計の仕様書に記載がありますので、その値をZCのMultiplier
Coefficientにて入力します。ZCの仕様は、ゼロクロスを2カウントした時間間隔の測定によって周波数を特定 します。風がないときはゼロクロスしません。このときは1秒で計測をあきらめ0Hz(0m/s)を記録します。ZCのインターバルはアナログセッティングで設定したインターバ ルと共通になります。ゼロクロス検出が出来るかどうかについて、例としてYOUNG社の風速計を使う場合、80rpm未満は検出出来ない境界と判断してください。現実的に 信号レベルとノイズの大きさが、おおよそ一致してしまう回転数がその地点になることが理由になります。この例を言い換えると80rpm=1.3Hz=0.127m/sなので、そもそも 起動風速にも達していないエリアなので、どうでもよいとも言えます。

4-8.雨量計などの接点パルス これはとてもシンプルな信号で、これこそパルスと表現できる信号です。PC(パルスカウンタ)入力の仕様は、設定したインターバルの間中(記録動作時間を含む。つまりAC パルスと異なり取りこぼしが無い)、生じたパルスを全て積算し、ログし、カウント数をリセットし、その繰り返しになります。例えば0.5mm/回の雨量計を使って、10分イ ンターバルの間に10回カウントされた場合、0.5mm×10回=5mmを記録します。時間分解能が高いデータを必要とするときはインターバルを短く設定すると良いでしょう。 PCを使用する設定を行うと、スリープ時でもカウント毎に消費電力が生じ、上記0.5mm/回の雨量計を使ったとすれば、約1.5μAh/10mm降雨量に相当します。雨量計の仕 様は様々ですが、0.XXmm/countという係数が必ず存在しますので、その値をPCのMultiplier Coefficientにて入力、設定します。PC入力は4ch装備していますから4個の雨 量計を接続できます。配線は以下の通りです。

雨量計1の信号線の1本   PC1
雨量計1の信号線の別の1本 DG
PC2〜4も同様です。



上記ELOGのCounter
Settingのページにてカウンタ関係の設定を行いますが、ELOGの初期状態ではZCもPCも全て使わない設定になっています。それぞれのActivationに チェックマークを入れていただくと動作する設定になります。センサーネームやCoefficientの入力後、ヘッダーのSave Setting Fileを押すことで設定が保存されます。動作 確認はアナログと同様右下のRead Nowボタンで実施できます。PCが例えば雨量計の場合、転倒マスを手動で動かし、最後にRead Nowを押す、ZCが例えば風速計の場合、 プロペラを扇風機で駆動させつつRead Nowを押すなど実際にセンサー類の動作を行う事でテストいただけますし、その値はフッダーに表示されます。Clear ZC及びClear PCは名の通りの機能で、テストした値をクリアします。ZCの測定のタイミングはアナログの計測が全て完了した後になり、PCはロガーから常時モニタされて計測されます 。

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