

デンドロメータ MIJ-02 Type3 幹周用ロータリー
参考文献
Overview
デンドロメータとは植物の成長速度を計測するセンサーのことで、縦方向の成長、横方向(幹周の成長)が古くから計測されていま す。原始的ではありますが、ベルト型のメジャーを樹の幹に巻き付け、その季節変化を目視で読み取る方法が代表的な手法です。この方法はローコストなので数多くの樹木の計測が可能というメリットがある反面、人間が定期的に確認する必要があり、数が増えるとなおさら労力を要求されます。一方、この変位を電気的に読みとる仕掛けがMIJ-02type3です。データロガーと組合わせることで、肥大生長を日変化、季節変化の両方、つまり短いインターバルで長期間に渡った自動読取を可能にしています。また目視タイプには不可能なμm単位での安定した計測が可能になります。
Features
・非破壊/ネジ固定型での計測が選択可能 (非破壊での計測にはキットが必要になります。)
・ワイヤー式を採用したことで装着直後から計測が可能
・ポテンショとプーリを丸ごと30度回転させることが可能
・ワイヤーを幹に近接(8.9mm)させたことにより、幾何学的補正を無視
・測定レンジが30mmと広い
・出力はレシオメトリック。ポテンショメータそのものの温度特性を回避
・計測範囲は直径40~∞ mm
ヒューマニエンス 40億年のたくらみ 「“CO2” 見えざる生命の創造者」2023年5月23日放送 (C)NHK
上記TV番組で紹介されているセンサーは、弊社のデンドロメータ MIJ-02 Type3 幹周用ロータリー です。






Carbon fixation: 炭素固定
炭素固定の話は二酸化炭素フラックス(CO2 やメタンのFlux)の計測、渦相関法、オープンパス、クローズドパス法と言った音の響きが小難しそうな単語が使われる分野で、膨大な費用と労力を要求されますし、それはチームを組んで管理し、人生の一部の時間を消費したなと実感するくらいに大掛かりな仕事になります。得られる効果は大きく、機材を設置した一帯(例えば海洋表面とか森林とか田畑とか)の代表的なCO2 Fluxを定量化できる素晴らしさがあります。ただし、一帯の収支(そこがCO2を吸収したのか発生したのか)が定量化できたという結果を得られますが、それが何故そうなったのかという部分が解明とか研究と呼ばれている現象の本質の追求になってきます。だからこそ土壌呼吸をピンポイントで計測したり、樹液流速を多点で計測したり、葉の光合成速度を計測したり、樹皮の呼吸、根の呼吸、たまには蟻の呼吸と言った細かいところまで、フラックスタワー近辺でのFlux以外のパラメーターの計測(SinkとSourceもしくはそれぞれの速度の探求)をがんばっている人々がいるのです。言い換えると、気温の計測を行ったらそれはその変化を確認できるだけであって、変化の原因までは解らないというのと同じです。
ここではシラカシ1本の炭素固定に限定した計算例を示します。
幹のサイズと高さからその体積を計算し、各種係数を用いて演算します。
使用機材 MIJ-02 TypeII 幹周用ロータリー
MIJ-12 防水ロガー
対象 シラカシ
樹高 5mくらい
計測開始時の幹周 365846 um(マイクロメートル)、胸高にて計測
★容積密度 620(kg/m3)
★炭素含有率 50%
★拡大係数 1.23
Plant Growth Rateと樹勢の数値化
本文は主に造園、樹木医の分野への情報となります。
デンドロメーターは樹木の樹勢の良否判定にも用いることができます。従来の樹勢の判断材料は枝葉の伸長、密度、葉色と言った外観診断を主なものさしとしていますが、そこには人の主観が入るしかありません。更にそのときの樹勢が一時的に弱っただけなのか、一時的に健全だっただけなのかの判定は不可能です。
正しい判定とは経時的なデータを確認して初めて可能になりますが巨樹は厄介です。樹が巨大化するほど、その幹周を母数とした変化の割合(生長速度)が微小(±数‰=±0.X% at 6 months程度)になります。なぜなら形成層で行われる細胞分裂で形成される木部の生産速度が植物の生長速度の根拠であり、その厚さは樹木のサイズには依存せず、どんな巨木でも数ミリの範囲でしかありません。それ故にその変位はμmの単位で計測しないと見えない動きであり、樹木医が呼ばれる案件は多くの場合は巨木が対象となりますから、その難しさはなおさらです。相当に悩ましかったことだと思います。
長期、無電源、無人、現実的な費用、樹体の直接的な物理量、非破壊という条件を満たせるセンサーは今のところデンドロメーターくらいしか該当するものはありません。得られるデータは幹周の変位とその速度のみですが、その解析を行うことで植物の成長率Plant Growth Rate (P.G.R.)を計算すれば成長速度の数値化が実現します。正常な樹木は確実に肥大しており、衰退している樹木は収縮します。つまりPGRが正であれば正常。負であれば異常と簡単に判断できます。
PGRはただの事実を表すグラフです。判断に必要なのはプロットの傾向(傾き)のみで数字を読む必要もありませんから、判定の根拠は容易に説明が可能です。グラフゆえにその理解も一目瞭然なので依頼者や地域住民の「理解と共感」を得た上で安心して治療や伐採を実施できます。なんならグラフを立て看板に表記しても良いでしょう。
何故伐採するのか?という疑問は純粋です。人によっては執着という欲が若干あるくらいでしょう。一方で伐採する側には経済的理由が必ず存在しますし、それ以外は何も無いです。そうでなければ仕事の定義から外れるし、理由も無く伐採するのはただの器物損壊です。樹木の伐採に関する人間同士のトラブルは、ほとんどの場合「感情と経済」もしくは「感情とお金」の狭間で生まれています。そもそも判断に使っている物差しの次元が両者で異なるので話し合いでは解決できません。両者が共有可能な別の物差しがあれば、それが唯一の相互理解の隙間です。
例えば見てわかるほどに危険で倒れ掛かっている巨木を伐採する作業者に反対する人は居ないでしょうし、むしろヒーローとして扱われることさえあります。「感情と身の危険」の天秤では後者が勝ちます。生き物としてはその判断で正しいと思います。建築物を建てる理由で邪魔な巨木を伐採するときは「感情とお金」の天秤なので解を得ることが難しくなります。有名な一つの例として、2024年11月16日、樹木医学会で発表された明治神宮外苑いちょう並木7本の計測データ※を公開します。18日の「新宿御苑および明治神宮外苑の樹木管理状況の視察」には発表者が参加していますから質問があれば聞いてください。
この現場での設置は7本、かつ2024年5月からなのですが、もしもっと前に多数の設置がなされ、データを示すことができていたら、住民の理解や共感を得た作業ができたかもしれません。
※引用:「樹勢改良処置後の効果検証としてのデンドロメーターの可能性 神宮外苑イチョウ並木における7本の初期記録から」直木哲 (直木技術事務所)、中島優(イビデングリーンテック㈱)、長井健太中島優(イビデングリーンテック㈱)

Options


非破壊専用キット(別売り)

フローティングマウント(破壊型)
Data Loggers
既にお持ちのデータロガーが使える場合は、弊社のセンサーが接続可能か確認するか、お問い合わせフォーム(ページ右上部)からお問い合わせ下さい。


Specifications
標準品型式 | MIJ-02 Type3/W1.0 (センサー・ワイヤー・ワイヤーカバーチューブ) (ワイヤー1m・ワイヤーカバーチューブ1m) ケーブル別売り(注文の際、長さ指定) |
測定範囲 | 30000 μm (Φ38198μm×π×90DEG/360DEG) |
出力 | レシオメトリック (例:プレヒート5V時に、出力のフルスケールが5V) |
分解能 | データロガー依存 (6um/mV。MIJ-01の場合0.06um、MIJ-12の場合6um) |
出力の回帰式 | dL=30000×Vout/Vpre (dL:変位um、Vout:電圧出力、Vpre:プレヒート電圧) (MIJ-01の場合 dL=30000*X001/5000をPVSに入力) |
プレヒート | 5VDC(1mA at 5VDC) |
耐電圧 | 18VDC以下 |
ピンアサイン | 赤:プレヒート 白:電圧出力 黒:コモン (プレヒートGNDと電圧出力GNDが共用) |
トルク | 0.03-0.15Nm(0-30mm範囲での実測値) |
ワイヤー温度特性 | 熱膨張係数17.3×10^-6/DEG (SUS304) |
防水能 | IP65 (ポテンショ部) |
使用温度範囲 | -40~100℃ (氷結で固着することはありますが、破壊はしない範囲) |
サイズ | 幅:56mm 高さ:90mm 奥行:53mm (ケーブル含まず) |
重量 | 116g (ケーブル、タッピングネジ含まず) |
プーリ回転角度 | 90度 (機械的,電気的共に90DEG) |
取り付けネジ穴 | φ4-2箇所 |
ネジ規格 | ポテンショストッパネジM4-10(六角穴対辺3.0mm) |
防水コネクタ規格 | 住鉱テックCL07D03M(プラグ)が本体側 |
標準付属品 |
*特別付属:六角棒レンチ3.0mm(1オーダーに付き1個の付属品となります) |
オプション |
・ワイヤー延長可能(1m~);ワイヤー延長した場合自動的にワイヤーカバーチューブも同じ長さ付属致します。 ・非破壊キット ・フローティングマウント |