受光スペクトル感度の最適化、熱型(サーモパイル型)日射計との実際の比較を基に





熱型の日射計の歴史は古く、150年にも及びます。一方、Si日射計の歴史は20年ほどしかなく、開発途上の領域から脱し てない状況です。それ故、解決すべき課題は沢山残っており、第一に耐候性、第二に受光スペクトル感度の最適化が上げ られます。それ以外にも入射角特性、回転角特性、温度特性他の基本的な要素もありますが、これらと第一の課題は MIJ-14PAR弐型/K2のマニュアルに記載の通りで、弊社としては解決済みです。基本的には受光スペクトル感度 (Spectral
selectivity)はSiフォトダイオードを使う限りは永遠に熱型を越える特性を得られることはありません。ただし 、屋外での実効値としてどこまで熱型に近寄れるかについては挑戦した例がとてつもなく少なく、歴史的に結論は出てい ませんからやる価値はあります。下に示すのが晴天と曇の日の地上での太陽光の分光スペクトルになります。実際は長波 長側に永遠に続きます。Siは感度の波長域が狭く、感度もフラットではない事が見て取れます。

 

恐らくその両方が熱型に比較してエラーの要因になっていると想像できます。PARでは400〜700nmの範囲をフラットな 感度に仕上げる事が肝要です。ここで、同じ発想で300〜1100nmをフラットに近づけるとどうなるでしょう。その結果 を示します。PROTO-1は感度調整した試作品、PROTO-2は感度調整していない比較対照です。言い換えるとPROTO-2 は一般市販品のSi日射計と同等の分光感度特性と解釈してください。結果として調整代(伸び代)はまだあると思います が、エラーを半分以下に押さえる効果を得ています。面白いのは日の出、日の入り時のマイナス側に出るエラーです。こ れはMIJ14の入射角特性の80度越えたあたりの特徴(グラフのみ下記)ですが、そのエラーも小さくなる傾向に見えます。

 

目で見ても赤以上波長の割合が増加する時刻ですが、PROTO-2はその辺に相対的に強い感度を持つためにエラーが強く 出ると解釈して良いでしょう。次に、曇りの日を見てみましょう。晴天時よりエラーが増えますが、やはりPROTO-1の 方がエラーが少なくなります。

 

これらのグラフを読む際の注意は、熱型、光電型の両方に異なる性質のエラーが内包されている事です。ゼロオフセット は熱型にしか存在しませんし、温度特性、応答速度も大きく異なります。入射角特性だけはスペクトル感度の調整を目的 にPROTO-1&2をCMP21に意図的に合わせて試作(太陽高度が低いとダラ下がりの方向)しています。特にゼロオフセ ットについては、7W@200W時がベンチレーション付きの仕様ですがここではベンチレーションされていないCMP21を 使っていますのでもっと大きな誤差要因になっているはずで、1〜5%を議論すべき上記結果では論外だと判断できます 。この理由で、「現段階での」を先に示しています。ここまでのテストでも感じることですが、熱型と光電型は、物性か ら来る特徴に違いこそあれ、どちらが良い悪いというものでも無いと思われます。