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Section2 Pre-Operation

Set Up

 LI-610内部のラジエター部と、外部のコンデンサー部を精製水で満たす作業について以下に説明する。

Filling the Radiater

 ○ Fil Tubeで水位を見ながら満水にならないように給水する。この際、Prastic

   Squeeze Bottleを用いると良い。

 ○ ACスイッチを入れ、クーラースイッチを入れるとポンプとラジエター

   間に水の循環が開始される。いったんACスイッチを切り、給水を行い

   、満水にならない程度に繰り返す。

もし、氷点下の環境中で本機器を保存するときは、Radiater内部の水を完全に排水しておくこと。また、このような条件下で使用する際には、Ethylene Glycolを入れること。混合比の参考値は、50対50の時、-40℃まで凍ることはない。

(※ Propylene Glycoなどのその他の薬品は入れないこと。)

Filling the Condenser Block

 通常使用においてCondenser Blockは20〜25mlの水を必要とする。

(※ 連続して使用する際は、2日に一回は交換すること。)

Condenser Blockの水は湿潤空気の製造によって消費、付加されるので、水位を厳重に管理する必要がある。特に、流入ガスと流出ガスの水蒸気圧が大きく違う場合には消費と付加が早まり、水位の変化も早くなる。

(※ 流入ガスのCO2が500ppmを越える場合、水の交換は早めに行うべし。高濃度のCO2はCondenser Block内部に水の凝結を促進し、気泡の発生が激しくなる。このことは、ガス流量を不安定にする。従って、もし流量計の指示がふらつくようであれば、そのときは水を交換するべきである。)

Power On

1. 省略

2. 省略

3. TEMP SET 露点温度の調整

  TEMP ℃ Condenser Blockの温度

  BATTERY バッテリー電圧

Cooler スイッチを入れると、ポンプによるペルチェとRadiator間に水の循環が開始される。AIR PUMPスイッチを入れ、FLOW ADJUSTバルブを開くとTEMP SET で設定した露点温度に飽和したガスがAIR OUTPUTより流出する。

Section3 Operation

General Description

 LI-610は露点ガスを発生するための装置である。乾燥ガスや周辺空気を流入ガスとして用い、そのガスをペルチェクーラーにより水温コントロールされた水中にバブリングすることにより発生させている。Radiatorとファンユニットは内部に設置され、ペルチェの発熱を放散させている。

Air Flow through the LI-610

 流入ガスは本体背面に設置するAIR INポートから吸引され、ポンプ前段のフィルターで不純物の除去が行われる。次にFLOW ADJUST VALVEによって流量がコントロールされた後、TO CONDENSERポートを通って2個の銅製のCondenser Blockに導かれる。この中でBubbler Stoneによって気泡になり、水蒸気に関する気液平衡状態になる。FROM CONDENSERポートを通してCondenser を出たガスは2方に分岐され、機器前面パネルのOUTPUT1, 2から流出する。OUTPUT1, 2のガス分配率はOUTPUT2のバルブで調節される。

Water Flow in the LI-610

 内蔵のRadiatorはCondenser Blockにある2個のペルチェクーラーで生じた熱を放散するために用いられている。このペルチェクーラーは熱を放出、吸収する素子で、流す電流の向きに応じてその効果を使い分けられるものである。COOLERスイッチが入っているときは、この機構によって温調が自動化されている。このときの温度検出はPlatinum Resistance-Temperature-Detector(RTD)を用いているため正確である。(上限は50℃)

ペルチェの熱放散面の温度が65℃以上になるとオーバーヒートを防ぐ安全回路によって自動的に電源が落ちる。引き続き温度が下がってくると自動復帰する。

Operation

1. 電源を入れる。

2. TEMP SETを表示し、COARSE(荒い)ノブとFINE(微細)ノブを使っ

  て目的の露点温度にセットする。

3. TEMP℃を表示し、COOLERスイッチを入れる。これで、ペルチェ、ポ

  ンプ、ラジエターファンが起動する。

4. AIR PUMPスイッチを入れるとOUTPUT1と2からガスが流出する。

  OUTPUT1+2の流量はFLOW ADJUSTで調節し、OUTPUT2を止めたい

  ときはOUTPUT2のノブを右へ一杯まで回す。

(発生までの所要時間の参考値として、雰囲気温度が20℃のとき、0℃の露点ガスを発生するのに約10分かかる。)

Command Input

省略

Analog Output

 電圧出力は±5Volts、100mV/℃。赤は+、黒は-、読みとり装置接続時のインピーダンスは100kΩ以上。

Theory of Operation

Ideal Gas Lows

 Condenser Blockにガスが流れると、水蒸気が付加、除去されてその水温における固有の水蒸気圧に達する。通常使用時には一般大気を流入ガスとして用いるので、以下に湿潤空気に関して記述する。

 大気圧における空気はほぼ理想気体の法則に従う。理想気体の分圧は、

3-1

成分ガスの分圧(kPa)

: 体積(m3)

: モル数(mol)

: 気体定数 0.008314(m3 kPa/mol K)

: 絶対温度(K)

Daltonの法則によれば、分圧の和は全圧であるので、

3-2

3-2

:乾燥ガスの分圧の和

: 水蒸気圧

また、とおくと

i成分に含まれる物質jのモル分率は、で示される。この定義と式3-1と式3-2によりとなる。ここで”w(mmol/mol)”を水蒸気のモル分率とおけば、

3-3

と示される。

Pure Water Vapor

 純水における、飽和水蒸気圧は温度だけの関数である。GoffとGratch(1946)が示した式を基にした温度の関数としての飽和水蒸気圧表はSmithsonian Meteorological Table(1984)に収められている。

 その表を基に、Lowe(1976)とLI-COR(1990)がそれぞれ求め直した関数は、6次式の正確なものである。(表3-1と式3-11に示す。)しかしながらそれは温度のみが変数である事が弱点である。LI-6252に装着した外部露点計による水蒸気圧の計測時にこの式は使用されている。

 6262のマニュアルにおいて、温度における飽和水蒸気圧はと示されている。(表3-1と式3-12に示す。)この式は-50℃〜+50℃の範囲において正確なものである。また、水蒸気圧から露点温度を求めるときにも使用している。

Moist Air

 空気の飽和水蒸気圧は、上記純水の場合と少し異なっており、大きくは温度、小さくは全圧を変数とする関数で表される。Buck(1981)は複雑だが正確な関数を示した。

圧力依存性はenhancement factor:として式に含まれている。このenhancement factorは、同じ温度における湿潤空気水蒸気圧の純水水蒸気圧に対する比として定義されている。これは主に圧力の関数であるが、厳密には弱い温度依存性も含んでいる。80kPaを越える大気圧で、0〜50℃の条件下ではenhancement factorに定数1.004を代入すれば十分に正確である。式3-5と表3-1によれば、より正確な値を求めることが出来るが、複雑なので練習計算には向いていない。そこで、80kPaを越える大気圧に限ってと置き換える。

 湿潤空気の飽和水蒸気圧は、圧力80kPa以上を条件として、

あるいは

 (kPa) 3-4

と示される。露点温度とはその温度においてこれ以上水蒸気を含めない位に水蒸気を含んだ状態を指していて、LI-610はCondenser Blockの水温に飽和したガスを作り出すものである。それ故にDew Point Generatorの名が付いている。

Pressure Effects

 露点ガスがLI-610から流出するとき、温度と全圧が変化することは問題である。610内蔵のエアポンプはCondenserのガス入口に位置しており、Condenserには610の配管による圧損と、後段に接続する機器の圧損により、小さな加圧が生じる。通常その値は0〜6kPaであるが、Condenserの内部の飽和水蒸気圧はこの微少な加圧から独立していると見なすことが出来る。よって、enhancement factorとして数えられるものである。この時の変動は例として、

 (無次元)    3-5

とBuck(1981)により示されている。5kPaは典型的なCondenser内部の加圧値であり1.5litter/minのガス流量時の値に等しい。T=20.0℃、P=100kPaのときf(T, P)=1.0039、T=20.0℃、P=105kPaのときf(T, P)=1.0041であるので無視できると言える。式3-5で明らかなように、通常はTとPの変動によるenhancement factorはわずかなものであり、80〜110kPa、0〜50℃の範囲において、f(T, P)=1.0033〜1.0043の変動範囲に収まる。

しかしながら、Condenserで5kPaの加圧は、後段に接続される大気圧下で運転している水蒸気圧計に対しては大きな影響を与える。このことを示すために、100kPaの全圧においてLI-6262を大気解放で運転し、LI-610のCondenser部では105kPaで運転している状態を仮定する。610で作られる露点ガスの水蒸気モル分率は610から6262の配管の間では、発生・吸収源が内限りは一様になる。610の表示はLI-610での値を示し、measの表示はLI-6262での値を示す。定義(※式3-3)より、

  (※ΔP加圧時のw610を示している。)

ここで、だから、(※構成時は各表示を同じに調節するという意味)

3-6

となる。この式は5kPaの加圧が、6262での水蒸気計測の値に約5%の減少を与えるというものである。Condenser加圧による誤差は以下の二つの方法で取り除くことが出来る。

_Condenser内圧を計測し、式3-6により補正を掛ける方法。この方法では、610に大流量と長い配管が接続されている場合など、Condenser部が比較的大きく加圧されている場合に適用される。610-03などの圧力計を用いることでこの内圧の計測は可能になる。そのほかの方法としては水や水銀を使ったマノメーターを使った計測がある。

_610と後段に接続する機器との配管を短くし、かつ低流量で用いる場合の方法。この方法がより一般的であり、内径1/8inch(3.2mm)以上のチューブを短く使って、0.25litter/min以下の流量で運転する方法である。それでも微少な加圧は免れないが、この場合はCondenser部に有るFill Tubeの目盛りを使った内圧確認が可能であり、この内圧確認法は十分な精度を持っている。

”1cmの水位=0.097kPa”の換算が、通常温度において有効である。(Section4に詳しく記載)

Temperature Effect

LI-610と後段に接続する機器間の温度差が水蒸気圧に与える影響の補正は必要ない。ガス流路の各部分における局所的圧力の差は、圧損として存在しているが、各部分においては定常状態にある。式3-1は、P=ρRTと書き変えられる。ρ=n/V=モル密度(mol/m3)である。全圧と配管構成が定常で有れば、ガスを構成する各成分の分圧も定常であり、このことは水蒸気分圧にも当てはまる。P=ρRTで温度Tが増加するとρは減少する。しかし、Pは一定であり、分圧もまた一定である。よって機器間の温度差は水蒸気圧に何の影響も与えない。

Relative Humidity

 相対湿度センサーの校正はLI-610の最も基本的な使用方法である。

3-7

eは湿潤空気のTにおける水蒸気分圧であり、e(T)は飽和水蒸気を示す。式3-4、3-6,3-7を用いて計算すると良い。おおざっぱに求めるときには表3-2を用いると良い。

Sample Calculations

 例1 23.0℃の温度で、相対湿度計の校正を行うと仮定する。

    ここではひとまず圧力補正は考えないで、次のステップを実施する。

_ 式3-4で、飽和水蒸気圧を計算。

_ 式3-7で、求める相対湿度に応じた、相対湿度センサーのチャンバー部

  の水蒸気圧を計算する。

_ 式3-4で、LI-610でのセットすべき露点温度を求める。

_ 23.0℃での飽和水蒸気圧は

_ チャンバー内の水蒸気圧は

_ ここで、LI-610のセット露点温度は水蒸気圧にして1.128kPaに調節する

  ことが判明したので、これに相当する露点温度は式3-4より

T=8.7℃

大まかな結果でよい場合図3-2を使うと良い。

 例2 例1の方法で問題があるような場合、たとえば流量が1Litter/minでチャンバー内圧が外圧97kPaに対して2kPaの加圧になっている場合を仮定する。チャンバー温度は23.0℃、要求相対湿度40%と仮定する。ステップ__は例1と同じだがステップ_で式3-6による圧力補正が必要になる。

_ e(23℃)=2.820kPa:飽和水蒸気圧

_ これより、チャンバー内の水蒸気圧はe=1.128kPaと計算される。

_ 式3-6をアレンジしてチャンバー内水蒸気圧1.128kPaを与えるためのLI-

  610における水蒸気圧は

_ 最後にLI-610の露点温度セットポイントを計算する。

T=9.0℃

加圧により、少しだけ露点温度のセットポイントTが増加するのが判る。

Additional Relationship

_ 式3-4、3-6,3-7を組み合わせると

3-8

RH: 後段に接続する湿度計での相対湿度

P: 大気圧

ΔP:Condenserの加圧

Td: LI-610の露点温度セットポイント

_外部機器における露点温度を求める必要があるときは、LI-610でセットした露点温度に圧力補正したものを用いると良い。式3-4、3-6を組み合わせて、

T:圧力補正後の露点温度

Water Sorption

 水蒸気は全ての材質に吸着するので、その平衡には十分な時間が必要である。特に大きな湿度変化を与えるときにはなおさらである。精度の良い校正を望むときには1時間以上を目安としても決して長すぎることはない。

Maximum Flow Rates

 通常使用において2Litter/min迄は問題ないことを確認している。

Section4

Calibrating LI-COR Instruments

General Information

 省略

Calibrating the LI-COR6262

Preliminary(:準備)

 LI-6262の各セル入り口にGerman Filterを装着する。

 ここで述べる内容は、精密なZERO SPAN校正である。そしてそれ故に時間を要する。CO2に関する応答性や安定性に比較して、水蒸気に関するそれらは非常に遅くなるといった、CO2にはなかった難しさが発生し、ドリフトが大きくなったり安定性が落ちてしまう事につながる。ただし、6262で水蒸気を検出する場合、露点計などに比較して分解能が格段に高い。それ故ごく小さな水蒸気の変動をも検出可能になる。高分解能を実質的に得るためには、関連する吸収現象、温度影響、圧力影響などを理解しておかなければならない。

(※高分解能のためには非常に長時間の校正作業が要求されるということ。)

 校正の手順として、はじめに要求する測定精度を決定し、その後平衡時間(校正時にガスを流す時間)を決定すると良い。以下に示す各時間は参考値である。

Absolute mode H2O Zero Calibration

 Differential modeとAbsolute modeのゼロスパン校正は非常に似ている。

_ 必要に応じてchopperモーターセルの薬剤を交換する。

_ 乾燥ガスをSam, Ref両セルに流す。ボンベガスでも良いし、大気から水蒸気を除去して作っても良い。このとき注意しなければならないのは、ボンベによるガスでも、若干の水蒸気を含んでいることであり、従って薬品によって除去した方がよい。

_ FCT77で大気圧を入力する。次にFCT 02 or 68でWREF=0を入力する。

_ 高い流量ではセル内の乾燥が早いので、はじめの20〜30分間は1Litter/minで流し、その後20〜30分間0.25Litter/min以下で流した後H2Oのzero調節つまみを回してZEROセットする。

Absolute mode H2O Span Calibration

_ LI-610露点温度を周囲温度における約80%にセットする。これは、配管などでの局所的な水蒸気の凝縮を防ぐためである。

_ 610-03圧力計をCondenser部に装着する。はじめの20〜30分間は1Litter/minで流し、その後20〜30分間0.25Litter/min以下で流し、それでも安定しない場合はもっと長時間流す。

_ 大気とCondenser部の圧力差を読みとり、式3-4を用いてCondenser部における水蒸気圧kPaを計算し、さらに式3-6を用いて圧力補正し、LI-6262での本当の水蒸気圧を計算する。この計算値に等しくなるようにH2Oのspan調節つまみを回してSPANセットする。

以上で、ここでセットしたzero spanの範囲の水蒸気圧が読みとれる準備が完了する。なお、これ以上のspan調節はAbsolute でもDifferentialでも必要ない。しかし、Differentialにおいて、リファレンスガスを変更した場合、再度Span調節が必要である。

Differential Mode H2O Zero Calibration

 Absolute H2O Span Calを既に行っている場合、Differential ModeでのSpan校正は必要ない。しかし、Zero校正は以下の方法で実施する必要がある。

_ Absolute Modeと同じ方法で、zero spanをセットする。

_ Ref, Sam両セルにリファレンスガスを流す。このとき、はじめの20〜30分間は1Litter/minで流し、その後20〜30分間0.25Litter/min以下で流し、安定しない場合はもっと長時間流す。

_ リファレンスセルの水蒸気モル分率をWREFにmmol/molの単位で入力する。式3-3、3-4、3-6の組み合わせからWREFは以下のように計算できる。

_ FCT33, 35 or 37でwater vapor differentialをゼロにセットする。

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