<観測オフシーズンにLI-7000をクリーニング>
観測オフシーズン、大気中の水蒸気が少ない冬こそ、LI-7000のクリーニングと薬剤交換の実施には最適です。
特別な施設や道具を持たなくとも可能な範囲でのメンテ情報です。(お決まり文句ですが、自己責任で御願いいたします。)
なお、LI62**シリーズは、セルの仕上げが全く異なります。
同じ方法でクリーニングしてしまうと、確実に破壊してしまいますのでご注意を。
LI-7500はセル洗浄はあり得ませんが、薬剤交換は同じような手順です。
<患者 九州大学LI-7000>
今回の患者は過塩素酸マグネシウムが溶解した水が、サンプルセルに流れてしまった7000です。
<準備するものリスト1>
-左下段から-
10mmボックスレンチ(肉厚が薄い方がよい。ディープソケットがお奨め。)とエクステンション
ラチェットハンドル1/4から3/8スクエア程度
プラスドライバー2番
プラスドライバー1番
マイナスドライバー1番
イグザクトレンチ
Optical Path Swab(LI-7000に付属)
マジックインク(マーキング用)
-左上段から-
ソーダ・ライム(Soda Lime)
エチルアルコール500cc(低純度でOKです)
過塩素酸マグネシウム(Magnesium Pherchlorate <8% water)
-その他-
エアコンプレッサー(ドレインとフィルターをラインの途中に入れて下さい。)
コンプレッサアーがなければ、スプレー缶式のエアダスター2本。
精製水500cc
1リットル以上の容量の容器(ステンレスやアルミの鍋などで十分です。)
<準備するものリスト2>
LI7000付属の交換用薬剤ボトルに底に1/3程のソーダ・ライムを、残り3/2は過塩素酸マグネシウムを充填しておきましょう。
底を机でたたいて十分に詰め込みます。キャップには紙のようなモノが付いていますが、その紙はボトル内外に気体だけを透過させる仕事をしています。
穴など開けないように注意。
<分解開始>
赤マークにネジがあります。ドライバーで外してしまいます。
<セル出現>
セルが見えました。これから写真左のディテクターユニットとセルを外していきます。
<圧力計>
セル内部の圧力はここから取っています。マイナスネジをゆるめて、取り外します。
(追記06/Jan/2003/セル圧力取りユニオン破壊の対処について)
このユニオン、個体によってかなり硬く締め付けられていることがあり、破壊してしまった例が報告されました。
(北大・高木先生、ご報告ありがとうございます。)
このユニオンのみ輸入する事は当社にて可能ですが、輸送コストの面からばかばかしく、推奨できません。
代用品として下記の国内メーカー製ワンタッチユニオンを装着して下さい。
(10個単位での購入になりますが、\4,000で修復できます。)
入手先・品名:SMC株式会社・エルボユニオン・KJL07-32・1/4-10-31UNF
<配線コネクタ>
赤印の3箇所にコネクタが有ります。引き抜きましょう。
<ナット外し>
赤印の4箇所のナットをラチェットでゆるめます。
<ナット外し>
ボックスレンチをエクステンションに交換し、ナットを外してしまいます。
<ディテクタユニット取外し>
ディテクタユニットはそのまま引き抜けます。水平に引き抜きましょう。
<汚れの拡大図>
サンプルガスラインには、ヒートエクスチェンジャー(写真の7本の銅パイプ)が付いています。
患者には過塩素酸マグネシウムがびっしり付着しています。この部分は汚れが付きやすいです。
<光源>
セルを引き抜くと写真のような光源の窓が見えます。
患者には過塩素酸マグネシウムがびっしり付着しています。上側がサンプルセルの位置になります。
<スウェジロック>
セルに取り付けられているスウェジロックを外します。徹底的に洗浄したい場合にはここまでやりましょう。
イグザクトレンチで反時計回りです。Oリングをなくさぬよう。
<温度計>
セルの温度センサを取り外します。
プラスネジ2個です。熱電対を曲げたりしないように。
取付時の向きを間違えないようにセルにマーキングを入れるといいです。
<セルの洗浄>
シャッターを押す手がありませんでした。
まず、アルコールと精製水を1:1で混ぜたものを適当な容器に準備します。
1リットルも有れば十分です。
Optical Path Swabを使って、セルとスウェジロックをじゃぶじゃぶ洗浄して下さい。
十分洗浄したら、コンプレッサーエアを使って、水分を吹き飛ばします。
セル内部はホーニングもしていない、かなり加工痕のある状態です。
バリなんかもあります。こんなにいい加減な加工で良いのか?と感じますが、
米国製を理由に、あきらめが肝心です。ともかく良く洗浄して下さい。
セルの貫通穴はガンドリルで加工したものに見えますので、切削痕は時計回りに付いているはずです。
Optical Path Swabは貫通穴に対して右回し、かつ鉛直方向にこすると、
うまく汚れが取れるはずです。水分を吹き飛ばした後、
十分観察し、ホコリなど無いような状態まで頑張りましょう。
<窓の洗浄>
これもシャッターを押す手がありませんでした。
光源側とディテクタ側を洗浄液を付けたOptical Path Swabで良く磨きましょう。
コンプレッサーで水分を吹き飛ばします。
<光源側の薬剤ボトル>
写真の場所に入っています。4箇所のネジを外します。
<薬剤ボトル出現>
ただ入っているだけで、固定はされていません。引き抜きましょう。
<薬剤の劣化判断>
写真のようにソーダ・ライムが青紫に変色していることが交換の目安です。
1年に一回は交換しましょう。
過塩素酸マグネシウムはさほど劣化しません。
<ディテクタの薬剤ボトル>
写真のようにネジ4カ所を外します。
<ディテクタの薬剤ボトル交換>
このように入っています。予め準備した交換用ボトルと入れ替えるだけです。
なるべく外気を取り込まないように素早くやりましょう。
写真の底部にも同じボトルが入っています。両方を入れ替えて下さい。要領は同じです。
ボトルの向きに注意しましょう。
<再組立>
バラした手順の逆に組み立てていくだけです。
以上で、薬剤ボトルの交換と、セルの洗浄ができました。
薬剤ボトルを入れ替えたときには、ディテクタ内部と光源内部の二酸化炭素と水蒸気が薬剤に
トラップされるまでに約2日間ほどかかります。使用を再開するまでには48時間以上寝かせて下さい。
交換前の薬剤の状態(劣化具合)によって、それまでのキャリブレーションで得られたゼロ点、
スパン点にシフトが発生します。
これは、薬剤が劣化していた時のディテクタ内部の水蒸気、CO2の存在量が変化したためです。
使用前には再キャリブレーションを実施して下さい。
<注意点まとめ>
作業前
●作業は風、ホコリがない場所で。
●作業台は良く掃除してから取り掛かる。
●雨の日(湿度が高いとき)は避ける。
作業中
●ネジをなくさないように管理(インチネジなので入手が面倒)
●組付けは締込みすぎず、弱すぎず。緩めたときの力加減を基準に1.2倍程度です。
●グリス類は一切塗らない。
●Oリングの洗浄は短時間で。(アルコールを吸収膨張してしまいます。)※紙か布で拭き取る方程度で十分です。
●必ずOptical Path Swabを使用する。(綿棒は繊維が残ります。)
作業後
●48時間以上寝かせる。
●キャリブレーションの前に十分に外気を流通させる。(気固平衡でサンプル&リファレンスセル壁面に洗浄時の水分が残るため。)
●キャリブレーションを実施する。
おしまい。