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SunburstSensors社SAMIについて
Sunburst Sensors社製造のSAMI pCO2です。溶存CO2を測定する機器は数少なく、長期観測できるシステムはSAMIくらいのものです。液液平衡と薬剤反応を応用したセンサーです。(「センサー」でイメージするほど小さな物ではないですが。)
京都大学防災研究所大潟波浪観測所の桟橋にてSAMI
pCO2を使った観測を継続中です。
暴風波浪の様子を掲載いたします。赤印水深約8mに設置。
平成16年12月現在定期キャリブレーション中。平成17年1月に再投入及び岡山大学&京都大学による集中観測予定。[T-shaped
Observation Pire. DPRI
Kyoto University] (Open to use for all scientist.)
28/Oct/2002 SUNBURST
SENSORS製品の日本総販売代理店になりました。
日本語での紹介、Specification
31/Oct/2002 SAMI CO2の国内販売を開始。耐水1500mタイプ、バッテリー内蔵タイプも扱います。
<はじめに>
SAMI CO2は地球規模で発生している気候変動(Global
Climate Change)に関する研究の一環として開発された測定器です。大気中に増え続ける二酸化炭素のどの位が海洋に吸収されているかを調査する道具の一つです。Think
global. Act localy.の典型と言えましょう。 しかし、その開発は決して大規模なものではありません。その開発は組織で実施されたものではなく、一研究者と民間人が協力して開発したものである点が他の測定器とは背景が異なります。近年日本でも産学官連携による新産業の育成に力を入れようとする動きがありますが、新たな制約や規制を作り出す方向性のため、成果を上げるには随分時間がかかるものと思われます。その反面、書類上の契約は一切無く、事実上の産学連携によって開発され、その成果として世界各国で利用されているSAMIの実例をここに紹介いたします。なお、日本環境計測(株)では、SunburstSensors社とSAMIの存在に敬意を表し、共同開発ならびに日本における販売とアフターサービスをサポートする所存です。
<産学連携で生まれたSunburst Sensors社>
1999年、Dr. Mike DeGrandpreとMr. David Irwinによって、モンタナ州立大学そばの小さな工場にSunburst
Sensors社が設立されました。Dr. DeGrandpreはSAMIの開発に約10年を費やしており、開発とテストはWoods
Hole Oceanographic Institution(ウッズホール海洋研究所)にて行われましたが、現在Dr. DeGrandpreはモンタナ大学の助教授となり、日々開発を続けています。Sunburst
Sensors社とモンタナ大学の関係はいわゆる産学連携という形の技術開発型ベンチャーです。政府からのGrantも継続的に受けており、その成果を全て製品に反映する事で、海洋学の推進に貢献しています。
<SAMIについて>
SAMI CO2はSubmersible Autonomous Moored Instrument
for CO2の略称です。その基本原理は、20年前に遡ることができ、基本はROCKS(Reagent-based Optical
Chemical Sensors)と呼ばれるものでした。ROCKSは当時革新的なセンサーでしたが、長期安定性(ドリフト)には問題が残っていました。その主な原因は使用する薬剤(Reagent)の劣化です。Dr.
DeGrandpreはその問題を解決するために、薬剤を常時流して捨てる(Flow through)機構をROCKSに付加することで解決しました。それがSAMIです。新しい薬剤を常時流しては捨てる構造なので、長期間、メンテナンスなしで、係留観測するためにはそれなりの問題も発生しました。薬剤切れです。現在試行錯誤の末、その期間は6ヶ月以上にまで延長することができました。
<基本原理>
この絵はSAMIの基本構造を表し、ROCKSベースで有ることが良く解る図です。シリコン製のメンブレンチューブの内側にBromothymol
Blueを流します。この薬剤はCO2分子が混入すると反応します。その反応の度合いを光ファイバーから導かれた光の透過度によって検出する仕組みです。当然ながら、光強度を検出するフォトダイオードやアンプが必要になりますが、市販のアンプではノイズレベルが高く、使い物になりません。Sunburst
Sensors社ではアンプも自社開発しており、SAMIにはよりノイズレベルの低いものを使用しています。
<ドリフト抑制の構造>
ドリフトはあらゆる測定機器にとって問題となります。SAMIでも同じです。Flow throughによって、基本的にROCKSの問題を解決したわけですが、物性の変質問題をクリアにしたに過ぎません。SAMIはシステム全体のドリフトを押さえる工夫も導入しています。光学系のドリフト、メンブレンの状態の経時変化などが挙げられますが、システムとして、一括してドリフトを消すために、薬剤を流すラインに安定した物質を流すことで対処しています。定期的に純水を流すのです。
<SAMIの弱点>
現在のSAMIは、深海のpCO2(溶存CO2)を連続計測できる唯一のセンサーです。そのため、解決すべき問題も残っています。キャリブレーションの手間です。手間を増やす要因は水温の変化です。実際の深海では若干ながら温度変動が存在します。また、SAMIセンシング技術の核である薬剤の反応度合も温度により変化します。SAMIでは、その変動分の補正を行うために分解能0.01度の温度センサーを内蔵することで対処していますが、その補正値は機器固有のものであり一台一台をキャリブレーションする必要があります。現在はモンタナ大の実験室にある恒温槽(0.02度精度)を用いて、かつLI-COR
LI-6251とSAMIを直列に接続して、一定濃度のガスを流しながら水温を換えながらキャリブレーションシートを作っています。他にも機器固有の問題として薬剤の精度があります。薬剤を精製、混合する際、どうしても微少な濃度の違いが出てきます。そこで、SAMIのオーダーを受けてから約2週間かけて一台一台のキャリブレーションシートを作る作業が不可欠です。観測現場に発送する際には既に稼働状態にありますので、長期間の保存が難しいのです。また薬剤の交換はエンドユーザーで実施できません。薬剤交換後、同じ要領で再キャリブレーションする必要があります。日本の場合は幸い当社にて再キャリブレーションを実施する事ができますので、あまり問題はありません。
<世界各国の水中へ>
SAMIは、現在までにカナダ、ニュージーランド、日本、ノルウェイ、ドイツ、アイスランド、スペインで使用されており、また、近年ではアメリカ海軍へも納入されています。Military仕様のSAMI(TOPの写真右側)のデザインは面白いことに軍自身によって設計されました。通常耐圧容器はPVCで作られており、耐圧は100mなのですが、軍の設計により材質変更を指示され、アルミニウムハウジングになっています。それは1500mまで耐えることがテストにより実証されています。液液間の平衡原理だからこそ可能な水深です。今後も日々その性能と信頼性を高めて行くことになるでしょう。
Specifications for
SAMI-CO2, Flow-Through and Moored versions
写真:右が本体、左がバッテリー
<本体> | |
高さ | 46 cm (生物付着防止コッパーメッシュハウジング含) |
直径 | 17 cm |
水中重量 | 5.5 kg |
乾燥重量 | 14 kg |
ハウジング材質 | PVC |
計測周期 | 標準30分(任意設定可能) |
応答速度 | 5 分 |
pCO2 測定範囲 | 200 - ~600 オatm |
pCO2 分解能 | 1 μatm |
温度分解能 | 0.01 ℃ |
最大水深 | 100 meters |
<バッテリー> | |
寿命 | 9ヶ月以下 |
種類 | 18 D cell アルカリ, 13.5 V |
<係留ハウジング> | |
耐引張加重 | 4500 kg |
直径 | 30.5 cm |
乾燥重量 | 12 kg |
材質 | SUS316 |
詳細は日本環境計測・katayama@environment.co.jpまで