Go to the English Page

前ページにもどる
PICUS Know How(読み物)
 弊社ではピカスを用いた測定を繰り返し、その問題点を明らかにして来ました。その結果欧州生まれのピカスはそもそも巨樹の測定用途に開発されたものであり、日本における街路樹などの小径木には適用できないことが解ってきました。ただし、その素性は良く、捨てるには惜しいという気持ちから、小径木から巨樹まですべからく対応できるシステム、つまり日本のマーケットに対応できるシステムに育てようと考えました。ここでは、業務として樹木内部を計測するために必要な工夫や装備などについて徒然と記載してます。現在、国内に3台しかないピカスのノウハウを記述してどれほどの意味があるのかは・・・・多分無いですね。TDML (Tree Doctor Mailing List)という樹木医向けのMLがありますが、そちらで流したネタと重複することがあると思います。あまりにマイナーなネタだったため写真も使わずに人様に意味が伝わらなかったので、後日談という位置付けでもあります。あと、忘れてならないのは1台だけとはいえ研究用途ではないマーケット(樹木治療のジャンル)で、成り行き上こういうプロフェッショナルな機器を販売してしまった反省を込めてのアフターサポートと赤字業務の記録でもあります。

課題
課題その1. 直径300 mm以下の小径木や街路樹などの測定が困難 (10/Dec/2004)
課題その2. 空洞率が過大評価されている (10/Dec/2004)
課題その3. 巨大過ぎる樹木はどうやって計測するのか (10/Dec/2004)
課題その4. 入り皮の問題 (12/Dec/2004)
課題その5. 形状入力作業の重要性について(21/Dec/2004)

雑談(課題とまでは言えないお話)
雑談その1. 釘を打たずに計測できないか (10/Dec/2004)
雑談その2. 木槌打診との比較 (11/Dec/2004)
雑談その3. いまどきRS-232C? (11/Dec/2004)
雑談その4. PCはどれがいい? (12/Dec/2004)
雑談その5. 超音波と可聴域の違い (20/Dec/2004)
雑談その6. キャリブレーション(校正)って必要? (21/July/2006)


課題その1. 直径300 mm以下の小径木や街路樹などの測定が困難
 高額なピカスを買ったのに、いきなり困った問題に遭遇してしまいます。これは約束できます。色んな意味でドイツ人恐るべしなのです。聞く所によると某メーカーのドイツの車でもそういうことが良くあるのだとか。買った側は高級品だと思いこんで買ったのに、実は徹底的に実用車だったとか言う勘違いが原因らしいですが。さて、ピカスに話を戻しますと、メーカーのマニュアル(注意:カタログではなくマニュアルなのがポイントです。買うまで読めなかったわけです。)では、モジュール同士の最低距離は150mm以上と記載されています。つまり12モジュール仕様だと幹周1.8m以上しか計測するなと書いているのです。この数字は根拠がないわけではなく、実際に使用してみて「まあそんなもんだ」と判断しています。さて、高額な機械なのに小さな木は計れないとは何事だ?と思ってしまうのは私は正しい感覚だと思うのですが、ドイツ人には通用しません。(確認済み)一方で、生きている樹木を伝達する音波(SONICって書いてあるから超音波・・・なはずなのですが、手元にある加速度計を使用して比較調査してみますと、ハンマーで打撃を発生させたくらいでは超音波と呼ばれる音域は発生することはなく、ピカスの場合は実はずばり可聴域(数百から数千Hzの範囲。)を検出してたりしています。Argusはベンチャーなので、まあご愛敬かと解釈しています。その速度範囲は800〜1600m/s(実測値)。このことから150mm間の伝達時間は90〜180μsec程度。一方、マニュアル記載の「弾性波の正しい発生方法は釘頭をハンマーで叩く」を採っており、その安定度(再現性とも言う)はお客様である木風KOFUの熟練したオペレータでさえも、数十μsecの桁を安定させることが限界なことは確認済み。(注釈1:安定度は樹趣次第で、数μsecで安定できる樹種もある。)(注釈2:原理原則的にはハンマー打撃の強さと弾性波の速度には関連がないはずなのですが、諸要因により現実には大きく関連しています。強く叩くと幹を伝達する弾性波は早くなります。) つまり、手動タップの誤差範囲は小径木における伝達時間を考慮すると???なことがあり、正しい測定は不可能となってしまうのです。その範囲が150 mm 以上のモジュール間隔となるわけですね。また再現性を考慮したとき、8モジュール仕様のピカスの場合、3×8=24回ものタップを安定させることが必要ですが、手動ハンマーでこの回数を安定させるというのはやってみた方は解ると思いますが、至難の業です。12モジュール以上の場合はなおさらで、弊社のピカスカタログを確認すると、PICUS30というのまで記載してますね。 m(__)m  まあ30モジュールとなると大径木しか計測しませんので問題はないわけですね。なお、この問題は樹種により発生しない場合もありますので、経験を積まないと意味が解らないカルトな現象とも言えます。実際、デフォルトの表示では各モジュールに弾性波が到達する絶対時間ではなく相対時間、つまり「比」を表示してる位なので、全くこの現象に気が付かないオペレーターがいても仕方がないかとも感じるのです。プロな方は現場でド素人から「マニアック」とか「おたく」とか言われようとも、めげることなく絶対時間表示に切り替えて、生の計測データを確認しましょう。ちなみに生データはμsecの単位で表示されています。ピカスフォーマット(.pit)ファイルはエクセルなどでも読めますので、生データが如何にばらついているかが解ると思います。ファイル中Bpointはベースラインの座標、Mpointは各モジュールの座標、olink*(*は数字)は各モジュールからのμsec単位での到達時間となっています。なお、ピカスでは3回以上のタップで平均値を採用し、さらに計測値間の絶対値ではなく比をとっているので問題ないではないか?という反論もあるかもしれませんが、この手法で解決できるのは、ばらつきの範囲とサンプリング数次第でして数回程度の平均で収まるばらつきではないのが現実です。

解決策 「RU-05 パルス スタビライザー」

 手抜きの対策は無理と判断し、作ってしまいました。(このデバイスが要求されるほど日本の樹木診断マーケットが成熟できるかどうかは?です。)ソレノイドを使った「打撃定常発生装置」兼「トリガー」です。トリガーとは、どの瞬間に打撃が発生したかをピカスに知らせるスイッチの意味で、RU05ではピカス付属のYケーブルを装着流用できるようにしてます。操作を間違わなければボタンを押すだけで、再現性は10μsec以下になります。手動に比較して「かなり楽」だと上記オペレータも申しております。オペレータを楽にすることは考えてなかったのですが、それだけ手動タップで小径木を計測することは負担が大きかったのでしょう。思い返すと二日酔い時には全く再現性が出なかった事がありました(笑)。今では幹周3m以下の測定(9割方これに入る。)では必要備品となっています。プロとして測定を行う場合、当然ながら結果に重大な責任が伴います。測定精度、再現性を確保することは大前提なわけです。そういう意味でデフォルトのピカスをいくら使い込んでも手動でタップを要求するような構造、仕様のままで小径木を計測する事は無責任な仕事となるわけです。当然ながらコルク層が厚い巨樹や樹皮近くの腐朽が激しい場合など幹に振動を伝えにくい場合にはRU-05では力不足なわけですが、そういう木はたいがい大きな木ですから、手動タップでも十分再現性が出るわけです。特に上記木風KOFUのオペレータなどにとっては問題ないレベルに到達しています。
 
実際の計測風景はこういう具合です。ボタンを押すだけです。右が直径約200 mmの樹木。モジュールはベルト2段掛けにて交互に装着します。そうしないと幹に並びきれません。形状入力ツールとして、CADが普及して出番がなくなりつつある図面書き用のディバイダーを今度試す予定です。RU-05の別な使い方として「乾燥木」の計測が可能になることです。木が乾燥すると弾性波の速度は速くなります。つまり生木で測定できても同じ木が乾燥すると計測できなくなるのです。ドイツの端っこではこの問題を解決していませんが、ここ日本の端っこではRU-05のボリュームを左に回すだけで弱いタップに切り替わり、乾燥木であっても弾性波の速度を抑える(コントロールする)ことができるのです。と言うことで乾燥木も計れていいるのですが、デモ以外のどういう時に乾燥した木を測る必要があるのかの答の方が謎になりつつあります。
上に戻る


課題その2. 空洞率が過大評価されている
 ソフトウェア上で空洞率を算出する機能について、メーカーであるアーガス社によれば、顧客からの要望で付けた機能に過ぎず、公に公開する性質の数字ではないと明言しています。これはつまり「参考値」ということです。(私には単に逃げにしか聞こえませんでした。)計測を業務で行う場合、その数字の公開は重要であり、画像だけでは樹木の診断結果としては少し寂しいわけですが、ではアーガス社が出す空洞率(画面上ではDecay of Cavity %っていう表示ですね。)とはどのような値で、それを元に計測値(参考値ではない)を求めることができないのか? と考えてみたのです。

S1:樹木の実断面積、S2:ソフトウェア上に描画される全断面積、S3:腐朽部の面積を示しています。ソフトウェアが出す空洞率Rs(%)=S3/S2×100、実際の空洞率RrはRr(%)=S3/S1×100。つまり分母が(S1-S2)だけ異なっていることが解りますね。Rsを補正するには釘の貫入長さ、幹周、モジュール数及びRsを変数としてRrを算出する補正式を作れば可能だと解ります。

解決策 補正式を組込んだエクセルのワークシートを作りました

 補正式を使用して試算してみました。モジュール数が増加すると誤差が減少する結果になり(当たり前)、補正の必要なモジュール数は15個以下という範囲でしょうか。国内で多用されるであろうモジュール数が8〜12個の場合、誤差の割合では有意な差が発生していることになります。これは大きな問題を含んだ数字でして、補正したものでないと公にできないという結論が出ます。そういうわけで、アーガスの数字は日本国内では有罪確定です。生の数字を公にするのは大変危険です。止めましょう。なお、ワークシートの内容は幾何学パズルなので、遊びで作ってみてください。
上に戻る

課題その3. 巨大過ぎる樹木はどうやって計測するのか
 
日本でピカスを使っていると「小さな木」を計測する事が多いです。しかし、日本にも巨樹は沢山あります。ここからは「巨大な木」を計測する際のポイントです。巨樹の測定では、得られる満足感や達成感は大きいです。しかし、神がかりな雰囲気の巨樹に小さいながらも釘を打つのは勇気がいる事も事実で、お参りしてからの測定になります。ここでいう巨大な樹木とは幹周10mを越える樹木とします。どうせやるならこの位・・・というわけです。本来、ピカスの仕様としては「計測可能な最大幹周=モジュール数×0.5m」です。つまり10mの幹周を計測する時には20個のモジュールが必要になります。準備できるモジュール数や予算に制約があり、デフォルトでは幹周6mが限界という条件であれこれ検討しました。本成果は木風KOFUとの共同実験により実現しました。

解決策 頭を使いました
 お付き合いのある(有)テラテックさんやアーガスとの関係もあり、手法については残念ながら公開できません。ただし、「可能である」という事が大きなヒントであり結論でもありますので、頭を使って独自に解決してくださるのは自由です。予算があればいとも簡単に解決します。モジュールを買ってくださる方が嬉しいです。これと同じ大きさの測定を行う場合はモジュールを28個揃えるだけです。その方が形状入力はもっと詳細にできます。12角形が28角形になるわけですね
 ここでは実験結果としてモジュール数12(8でもこの大きさなら問題ないけど12の方が見栄えが良い。)にて、幹周13.6mを計測した結果を非公式に公開します。非公式ですが計測の信頼性は弊社が保証します。XY座標の目盛に注目してください。単位はcmです。4.329(m)×π=13.6 m 今回は計測時に光波を持参してなかった事と、日が落ちてきて時間がなかった(<約1時間)ので、形状入力しませんでした。補正空洞率41.8%です。3人でなんとか時間内に幹周13.6mの測定ができました。前のページで海外のピカスユーザーや会社にリンクを貼ってますが、
公開されているデータとしては、世界一大きな樹幹の測定例です。(アーガスがモジュールを30個使い、幹周15mを計測したことがあるらしいとの話を聞いたことがありますが、公開はされていません。)案外、巨樹の測定って少ないのか、あるいは28個前後のモジュールなんて誰も持ってないのか。もしくは世界的に見てもそういう測定対象木は少ないのでしょうか。この画像が出てきたときには感動したことを覚えています。(→当然ながら、しかし正しい乾杯と言う流れでした。)木風KOFUさんの場合、プロとして内観診断を行ってるわけですから、「大きい木は計れません」という言い訳が通用するはずもなく、この問題を長い間悩んでおられたわけです。以後安心して受注できると安堵されていました。13.6mより大きな巨樹で、釘を打っても良いよという樹木や、少々釘打ってでも診断検査する必要がある木などがありましたらお声掛けください。「診断結果(計測結果)を伐採の判定材料に使うよりは、診断が治療に繋がる仕事にする」というのが木風KOFUさんの方針で、巨樹は特にそうありたいということです。ちなみにこの手法では20mまでは明日にでも、30mまでは計画準備期間が数日必要、それ以上は新たな予算だけど最低限の予算(笑)が必要です。
上に戻る


課題その4. 入り皮の問題
 下に示しますのが、とあるソメイヨシノの計測例です。右と左は同じ場所の計測結果ですが明らかに違います。実はこの現象は東京で実施したデモ時に初めて経験したもので、機材が壊れたかと思ったほどの衝撃を受けました。レアケースなのかもしれませんが検証する必要があります。一時期TDMLで話題になった「びっくり桜」のお話です。
 
解決策 従来の外観診断も重要です
 
一体何故こういうことが生じるかと言いますと「入り皮」や「クラック」があると弾性波の強弱によって、それが通過したり、しなかったりする為です。あるしきい値以上の力でタップ(ハンマーで弾性波を発生させること)すると入り皮を通過するのですが、それ以下の力だと通過できないのです。通過できなければ弾性波はクラックを避けて伝達しますのでソフトウェアには「穴」があるのと同様の数値に見えてしまうのです。(詳しくはこちら)一方、通過できると穴が無い数値に見えます。右にこの時の写真を示しますが、明らかに入り皮が確認できます。どの程度の深さまで入っているかは伐採するまでブラックボックスです。やっかいなのは、PCのモニターを見ているだけでは穴なのかクラックなのかの判定ができない事です。対策としては内観診断装置ではあるけれど、外観診断も同等に重要であるという認識を持つしかありません。こういう明らかな明暗を出してしまうのは音波を使った診断機の宿命であり、原理を変えない限り今後改良されることはありません。こういう場面では、オペレーター、樹木医、研究者の技量・経験が要求されるわけです。従来多くの方々が実施してきた外観診断ですが、その診断に自信がない方などが「使えない機械」とか「熟成を待つ」とか判断するのは、実はピカスのようなプロ向け機材に対しては大正解の判断でして、心身共にアマチュアな方には是非とも使って欲しくない機材の1つです。下手な扱い方でも結果が出てしまうのが怖いところで、その結果がどこかで公開されてしまうと機材の信頼性自体に影響してしまう結果になります。
 この特徴を逆に利用すると、クラックがどのあたりまで進行しているかを検出する事が可能になります。従来の診断装置では入り皮やクラックの検出はまず無理でした。しかし複数のセンサーを使用するピカスだからこそ、クラックの位置や深さまでも検出することが可能になります。現実的にどういう作業を行うかというと、極めて軽く、しかし全センサーに弾性波が届く程度のタップを行うのです。(手動でそれができるのは木風KOFUのオペレータくらいしかいないという話は別にして。)もしくは上記RU-05のボリュームを下げるだけでもクラックが通れない弾性波を作ることが可能です。逆にクラックを見る必要がなく穴だけ見たい時には大きめの弾性波を作ればよいわけです。「猫に小判」もしくは「馬鹿とはさみは使いよう」という格言に当てはまらないように注意しなくてはならないわけですね。(実はこのデータを見た後、RU-05は印可電圧の改造を受けました。もちろんパワーアップの方向に。だから現在ではボリュームを「絞る」んです。(笑))
上に戻る


課題6. 形状入力作業の重要性について
 ここで言う形状入力とは、計測する断面の外形をピカスソフトウェアを使って入力する作業を指します。ピカスを買うと標準で付属してくるソフトウェア(ピカスソフトウェアと呼ばれていますが)の中でもかなりのこだわりを持って作られたプログラムが存在します。それが形状入力です。計測に入る前に形状入力モードにて、Ellipse、Free shapes、 Free shapes caliperの中から1つを選択します。楕円(Ellipse)の意味は断層形状を楕円や円と見なして入力すること、他2つはモードの違いだけで中身は同じなので、自由な形状を入力することとなります。実際にやってみるとやはりEllipseが一番簡単な入力となります。他のモードはそれなりに面倒な作業です。今回はこの面倒な作業の意味や作業時間対効果を検証します。 
8モジュールの場合

小さくて見えませんね。左が42%、右が44%です。幹周は実測値2660cm。黒松。上が北。
12モジュールの場合

左が45%、右が54%です。幹周は実測値2250cm。ヤマモモ。上が北。

答え6. 形状入力はとても重要と言い切ります

 論より証拠、画像がどの程度違う物なのかを検証しました。上記2組の画像は、同じ計測データを元に形状だけ変更した場合の比較を示しています。左セルでは8モジュールの場合を、右セルでは12モジュールの場合を示しています。それぞれの組の左側がFree shapesにて正確に形状入力を行った結果、右側が円として入力した結果となります。腐朽及び空洞の割合については、フリーシェイプ時の形状次第で差が有意だったりそうではなかったりと違いがありますが、腐朽の位置や様子には明らかな違いが発生してしまいます。差は一目両全なので、解説は不要だとは思いますが、ざっと説明しますと、課題5でも触れたように腐朽や空洞が何処にどれだけあるかを見極めるために弾性波が伝播する速度の差を比較していますが、速度というのはご存じのように距離を時間で割ることによって得られる指標です。形状入力を行う意味は、その距離を正確に計測することに他なりません。この作業を行わない場合は円や楕円としてセンサー間の距離を処理しますので、誤差の絶対値は木の大きさに比例します。一方小さい木だからと言って形状入力はいい加減でも良いかというとそうではなく、逆に1cmの差でも大きな差の割合になってしまうわけですからmm単位での計測が必要になります。こういう重要なというかとても基本的な意味を持つ形状入力なのですが、何故かそのポイントを押さえているのはピカス位のもので、他の機材では見かけない機能です。とても重要なのに、一般的には軽んじられている事を考えるとピカスの開発者は素直であると言えます。ただし形状入力を行うには、現場で時間を要し(慣れると5分程度)、機材が別途必要、たまには「光波」などという大がかりな機材が必要だったりとオペレータにとっては「非常にめんどくさい」と思える作業です。
上に戻る

雑談その1. 釘を打たずに計測できないか
 
ピカスの計測は、マニュアルによれば「釘を打つこと」が一種の儀式になっています。意味は2つありまして、樹木の表面にあるコルク層(樹皮)は一種の多抗質であり、また剥離していたりと弾性波を使った計測の大敵なわけです。もう一つの理由はセンサーの先端にマグネットが付いていてそのマグネットをくっつけるには磁性体が嬉しいわけです。そういう理由からアルミ、銅、真鍮などの釘は使えません。しかし、傷を付けない方がよろしいことは明白であり、ピカスの弱点でもあります。

解決策 条件によっては可能でした
 古いスギなどは樹皮が5センチ以上になることもあり、こういう場合はやはり釘を打つしかないのですが、そうではなく、比較的薄い5ミリ以下程度の樹皮の場合に限定して、釘を打たなくても計測は可能です。センサーは両面テープで直接樹皮に固定、もしくは画鋲の針を取り外した物を樹皮に固定して、という方法で測定ができます。実演の写真は撮り忘れました。後日再テストできるかも。
上に戻る



雑談その2. 木槌打診との比較
 
樹木医の方々や研究者とお話ししていて良く話題になるのが、木槌打診の検出能です。軽くて、安くて、壊れにくく、電気も不要というこの診断器ではオペレータの耳をディテクターに使用しています。要するにオペレーターの能力次第でどのようにでも解釈が変わる点が問題になってしまう機器なのです。確かに耳の良い、感の良い方はいらっしゃると思いますし、またキャリアを積めば聞き分けられるという方もいらっしゃいます。しかし、実際の所はどうなのだろうというのがここでのテーマです。

現状での答え ピカスが出す結果とは約50%で合致します。条件次第で的中率は向上します
 数多くの木槌打診による予測とその後のピカスによる診断、伐採しての確認を実施してきました結果、約50%は的中します。条件として、幹表面から5センチ以内に存在する穴や腐朽に限定するとその的中率はかなり向上し、90%以上にもなります。しかしこの条件では、素人の著者でも聞き分けが可能で、「コツコツ」が正常だとすると、「ポクポク」が異常な音というくらい容易な判別が可能です。
上に戻る



雑談その3. いまどきRS-232C?
 
最近めっきり見かけなくなりましたRS-232C仕様のデジカメ他のPC周辺機器ですが、そのほとんどはUSBに移り変わってしまったようです。バスパワーが使える点がとても便利ですし、そもそも小さいので最近のPCにはポートが2つは付いてますね。さて、ピカスの仕様をよく見ますとなんとRS-232C仕様となっています。懐かしいなあと感慨にふけった後、ふと大事な事に気が付きます。「RS-232Cって言われても・・・・・ポートが無い」。そうなのです。デスクトップ仕様?と聞きたくなるくらいの大きさのノートPCは例外として、小型化・軽量化・バッテリー駆動時間の増加などの競争にさらされて進歩してきたモデルにはRS-232Cポートは付いてないものがほとんどなのです。というか筐体が薄くなって物理的に搭載不可能なのです。ピカスの場合、屋外で使用するので、なるべくバッテリーの持ちの良いモデルを選択したいのですが、この問題が課題となるわけです。

解決策 RS-232C←→USB変換ケーブルを使いましょう
 実は現在でもほとんどの測定器や計測器機はRS-232C仕様がほとんどでして、それにはそれなりの理由があったりします。結論としては要するに、なんとかUSBポートに接続できればいいわけです。RS-232CとUSBの変換ケーブルを使いましょう。著者がピカスにて動作確認したモデルはRATOC社製REX USB60です。多種多様な物が出回っているのですがこのモデルはそこそこのお値段するだけあって、各種計測機器との相性は抜群。きちんと仕事をしてくれます。以前は安物で接続できなかったりと言った経験もしましたが、このケーブルは現在の所100%成功しています。付属のCOM Port Changerも便利です。これと同じじゃなきゃ動作しないってわけじゃないんですけど一応のご紹介です。ところで何故変換できるのでしょう?実はRS-232CもUSBも似たような規格で、どちらも言ってみれば「シリアルケーブル」なんですね。
この変換ケーブルについては弊社でお買い上げくださったお客様にはご希望があれば標準装備します。
上に戻る


雑談その4. PCはどれがいい?
 
ピカスを使うにはパソコンが必要です。しかしパソコンは付いてきません。何故かというと20万前後するノートPCを付属すれば単純に20万円UPしなければならず、高額な機器がなお高額になってしまうからです。逆に表現するとPCで制御できるような仕様だからこそ、高額とは言えこの程度の価格で販売が可能になったとも言えます。80年代までの測定機器類はスタンドアローン型でしたからあらゆる仕事を装置1つで自己完結しなければならなかったわけで、そういう時代にピカスが開発されていたら販売価格は現状価格からプラス2〜3百万円になったと思います。さて、話を戻してどういうPCが良いかという質問を良く受けます。ここでご回答いたします。

答え 好きなのや慣れたのをお使いください
 屋外で使用するわけですから、ノートであれば何でもよろしいようです。雑談その3でRS-232C接続の問題は解決していますので、選択の幅は広いです。個人的にはVictorがOEMで出しているInterLinkシリーズが小さくて、比較的安価で、バッテリーが持つので不具合無く使えています。街路樹測定時にはモジュールは8個で計測していますが、その場合ピカスはシステムとして約8時間程度バッテリーが持続します(連続ON時)。XP7310LL(絶版モデル)は実質7時間持ちますので十分です。一番優先すべき機能はバッテリー持続時間です。画面が大きくなければならない必要性は無いので、小さい画面の方が持続しますね。
上に戻る



雑談その5. 超音波と可聴域の違い
 音について調べることが増えました。音とか超音波と言った技術は長い歴史を持っており、それだけ蓄積されたノウハウが多く、従って多種多様なマーケットに部品があふれています。つまり開発に必要な既存部品が多く、初期コストが比較的安価となります。また一方で樹木診断マーケットはとても小さく、かつ民需が大半を占めていますので販売価格の制約という背景を考えるとどうしても音を使った診断が現状ベストになります。音を樹木の診断に適用する場合、2つの道があり、1つは反射音を利用する方法、もう一つは透過音を利用する方法があります。また音の周波数から考えると超音波と可聴域に分けられます。今回は後者についてどういう違いがあるかについてです。
 日本では木製電柱の腐朽診断用に超音波を使った装置が研究、開発された時代がありました。ところがご存じのように今時の電柱はコンクリートや鉄で作られていまして、木製を見つける方が難しくなってしまいました。当然ながら開発や製品化もストップしてしまったわけです。日本と言わず多くの国では電柱より樹木の方が多い事は間違いないのですが、日本のこの時代、樹木はどうでも良かったわけですね。超音波を使おうとした理由がもう一つあります。医療分野で超音波診断(エコー)がブレイクしていたらしいのです。「見えない物は超音波で」という流れがあったのかもしれません。一方、EUでは最初から可聴域を利用した測定器が多いようです。超音波発信器の入手が難しかったのかどうなのかは解りませんが、確かに可聴域をターゲットにした方が部品が安いのは事実で、高い部品でも加速度センサーが数〜数十万円という範囲です。
 さて、両者の違いは何かと考えますと周波数が違うだけです。しかしその性質は大きく違います。特に「減衰」と「速度」です。弾性波として音が樹幹を伝導するとき減衰を受けます。減衰量は周波数が高いほど増加します。速度は逆で、周波数が高いほど早くなります。他にも直進性の違いなどもありますがここでは省略します。では、この2つの特徴は診断装置にどのような違いを及ぼすのでしょうか。減衰を受けやすいことは直径が大きな樹木の計測が難しくなります。速度が速いことは空洞や腐朽による速度差を出そうとしたとき検出し難くなります。総じて、可聴域を選択する方がより楽な開発を楽しめる事になります。まあ診断の正確さとか分解能とか他にも比較要素は沢山あるんですが、製品として形になるかならないかの違いは楽か困難かの違いとも言えるわけです。将来的に見ますと、超音波を使った樹木診断装置の方が正しい結果を生むことは明らかです。そういう事実を認識しているからなのか、EUの製品は可聴域を使っていてもSONICって書いてあるのをよく見かけます。コンプレックスの一種かもしれません。
上に戻る



雑談その6. キャリブレーション(校正)って必要?
 ピカスは校正が必要か?という問合せが何故か人づてに伝わってきました(疑問を持った人が直接連絡くださればいいんですが。)ので、ここで説明を。回答から申し上げますと「不要です」。全ての計測機器はキャリブレーションが必要である。この言葉は良く聞きますしその通りです。ピカスには振動をキャッチするセンサーが複数ついています。そして振動が樹幹を通る速度を検出しています。ただし、速度を直接計測できているわけではなく、センサーを単なる振動スイッチとして利用しています。ハンマーでたたいた場所のセンサーがタップと同時に「ON」と判断し、その時刻を記録します。次にタップで発生した振動が別のセンサーに伝わるとそのセンサーが「ON」と判断し、その時刻を記録します。時刻同士の差が振動が伝わるために要した時間です。センサー間の相互的な距離はあらかじめ「形状入力」の作業でインプットされていますから、速度が判明しますね。このようにピカスのセンサーは信号の強弱を計測しているわけではなく、単なる振動スイッチの役割を果たしていますから、動作していればよいだけのお話になります。つまり、「ピカスは校正が必要か?」って問いは「電源スイッチの校正は必要か?」という問いと同じ意味です。(動作確認は必要ですけど。)なお、内部のマイコンのカウンタ機能(計時機能)の校正は?って問いならばまだ意味はあるんですが、デジタル時計のクロックの校正をするかというと皆様ご存じの通りです。まれに時間がとっても狂うデジタル時計もあるかも知れませんが、そのときは交換です。ピカスも同じく部品交換になります。その目安はソフトの上でエラーを表示しますから直ぐに解る構造です。


不定期ながらピカス計測ネタを追加していきます。

前ページにもどる