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本ページは樹木の断層画像を非破壊検査する装置PICUSについてご説明するページです。
<もくじ>
1. ピカス技術概要

2. 計測手順
3. 断層画像の計算
4. 断層画像について
5. 多数点の測定(3次元測定)
6. 断層画像の解析
7. Bluetoothの使用について
8. 仕様

1.ピカス技術概要
 音が樹木内部を伝わるとき、その速度は弾性係数と密度に影響を受けます。樹木の場合、健康な部位は密に、腐食を受けた部位は粗になっています。音が伝わりやすい順は 固体>液体>気体の順ですから、音の伝わる速度は水分含有量に比例し、水分を多く含んでいる部位が音を伝え易いと言えます。この簡単な性質を使い、断層画像を求めるのがPICUSの基本原理です。例えば左上図のように大きな穴が開いている極端な場合を考えます。矢印部分から発生した音は各箇所へ直線的に伝わるのが一番早いわけですが、穴がある場合それを回避するように伝わるしかありません。(穴の中を貫通する音もありますが、それは上記の理由でとても遅く到達しますので無視できます。)つまり直線的に伝わる場合と穴を回避して伝わる場合とでは若干の時間遅れが発生するのです。内部は普通目視できないブラックボックスになっていますが、その時間遅れを計測することで穴があるかないか、その大きさ、場所などを特定する事が可能になります。実際の計測では矢印部分を全周にわたって8〜20箇所をハンマーで叩くことにより計測データのメッシュを作り(左下の図)、断層画像(右下の図)を得ています。右上の図は自動車事故によって傷つけられた樹木の測定結果です。
 しかし、その速度は樹種、季節、生育環境、直径など様々な要因で異なり、速度の絶対値を計測するだけでは正確な情報は得られません。PICUSではそれら誤差要因を全てキャンセルするために「速度の比」を計測しています。もう一つの大きな誤差要因は樹木表面にあるコルク層が音の伝達を大きく阻止することですが、コルク層を貫通し最新の年輪に到達する程度の小さな釘を打つことで対処しています。これらのアイデアと構造により計測誤差を最小限に押さえることを実現しています。


 では実物の計測の様子を見てみましょう。まず、写真のように幹に等間隔にモジュール(音の受信機)を配置します。モジュールからはマイクが出ており、そのマイクはコルク層を貫通した釘の頭にマグネットで固定されています。


1つのモジュールのマイクを釘から取外し、モジュール正面に固定します。次にYコネクタを用います。Yコネクタは三つ又になったケーブルですが、マグネティックコンタクト、ハンマーコンタクト、メタルピンで構成されています。これらをイラストのように装着します。Yコネクタの役割はハンマーで叩いた瞬間の時刻をモジュールに伝えることです。その時刻を基準として各モジュールまで音が到達する時間を計測します。この操作をモジュールの数だけ繰り返すと計測は終了します。以上の作業は慣れると約15分以下で完了できるようになるでしょう。

2. PICUSセット内容

モジュールは12〜30個(選択可能)です。
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2. 計測手順
測定手順は大きく5つのステップに分けられます。以下順を追って説明いたします。
<ステップ1>
計測断面の高さとセットするモジュール数を決める
計測高さは任意です。モジュール数は下記の表を参考にしてください。
(注釈:要するに「最大幹周=モジュール数×0.5」「最小幹周=モジュール数×0.15」となります。)
モジュール数 最大幹周 最小幹周
12 6.0 m 1.8
14 7.0 m 2.1
16 8.0 m 2.4
18 9.0 m 2.7
20 10.0 m 3
22 11.0m 3.3
24 12.0 m 3.6
26 13.0 m 3.9
28 14.0 m 4.2
30 15.0 m 4.5

<ステップ2>
樹木の断面形状を見極める。
単純な形状なのか複雑な形状なのかを見極め、以下の2通りの方法で入力します。

(楕円形状の入力)
メジャーを測定したい場所に水平に巻きます。メジャーの始点はモジュール1の位置になり、メジャーの読み値は樹木の最大直径を示します。
プログラムの “measurement” → “change geometry” → “ellipse”を選択し、XとYを入力します。Xは短軸距離、Yは長軸距離です。この操作により各モジュールの位置はPICUSソフトウェアから指定されますので、それに従って順番に「釘」を打ちます。方向は反時計回り、位置はメジャーの上約10センチくらいが適当です。


(複雑形状の入力)
プログラムの “measurement” → “change geometry” →“Free shapes”を選択します。図に示すように二つの計測方法(“One -Baseline System” or “Three - Baselines - System”.)がありますが、樹木の大きさや所持しているキャリパーによって選択してください。この操作により「釘」の位置はPICUSソフトウェアから指定されますので、それに従って順番に「釘」を打ちます。方向は反時計回り、位置はメジャーの上約10センチくらいが適当です。釘の深さはコルク層を貫通する程度あれば十分です。


<ステップ3>
モジュールを設置します。
モジュールも釘と同様、反時計回りにセットします。モジュール1の右にモジュール2が配置される方向です。まずメジャーのすぐ下にストラップを巻き付けます。ストラップの役割はモジュールの固定にすぎませんので、位置はあまり神経質になる必要はありません。目安はメジャーの約10センチ下くらいでしょう。設置したストラップにモジュールを釣り下げていきます。(位置関係は写真を参照してください。)その後、モジュールから延びるセンサーを釘に装着します。センサーはマグネットですから装着は容易です。

<ステップ4>
計測します。ソフトウェアのメニューから、“measurement” → “measure sonic”を選択しますと計測の開始です。Yケーブルを使って3回ずつノックしていきます。弱いノックか強いノックかは樹種により変わります。

<ステップ5>
全てのモジュールについて4.を繰り返していきます。
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3. 断層画像の計算
断層画像を得るには“Calculation”ボタンを押すだけです。PDAによる計算と、PCによる計算では、計算速度の制約から画像の解像度が異なります。またPDAでは計算に数分を要することがあります。
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4. 断層画像について
断層画像上の色分けは、音の伝達の早さを表示しているにすぎません。ですから、腐食なのか穴なのかの違いを明確に表示しているわけではありません。以下の段階に色分けされています。
黒/茶 音を最も早く通す部位
次に早く通す部位
次に早く通す部位
青/白 最も通し難い部位
赤い点 センサー位置(1番は常に一番上に表示されます。
青い線 センサー間を結ぶ線(計測された部位は青い線の内側です。)


以下にいろいろな測定例を示します。

シナノキ 大きめの腐食

Spruce アリによる食害

カバ 腐食

オーク 穴

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5. 多数点の測定(3次元測定)
 腐食の原因を見つけ出すためには高さ方向に複数の断層画像を測定するのが効果的です。腐食の大きさが上部に行くに従って小さくなる場合、腐食の発生部位は根にあると予測できます。以下に3層にわたってカシを計測した例を示します。赤いエリアが占める割合が徐々に小さくなっていく様子が解ると思います。根がダメージを受けた事が原因(根株腐朽)で、それが上方向に広がっていったと考えられます。


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6.  断層画像の解析
断層画像を解析する場合、次の事項に注意してください。
○濡れた樹木を測定した場合、断層画像には誤差が発生することがあります。
○ 割れ目は実際より広く表示されることがあります。

○ 輪形の割れ目は図のように広い範囲の穴に見えることがあります。特にユーカリは、輪形の割れ目を持つ傾向があります。

○ 星形の割れ目や直線的な割れ目は図のように広い範囲の穴に見えることがあります。古いカシは、このような割れ目を持つ傾向があります。

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7. Bluetoothの使用について

Bluetooth無線通信技術を用いると、PICUSの操作がより楽になります。Bluetoothは近年のPCやPDAに標準装備もしくは後付にて装着することができ、PICUS もこの規格に対応しています。

8. 仕様
ケース外形 540 x 480 x 180 (mm)
全重量 11.3 kg(モジュール数12個の場合)
充電時間 最大10時間(自動で充電はオフします。)
モジュールの消費電力 35mA(20℃)
バッテリー使用時間の目安 4時間 計測可能樹木数24本 10分/本時(12モジュール)
使用環境温度 0〜40℃
充電時電源 交流100〜240 V、2.1Ah

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以上、2003/05/05現在

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